絶滅危惧種②電気ミゾキリ

以前、丸太柱の壁じゃくりを下地を付けてからでも行えるため、際切り出来る充電式丸のこが重宝したと書きましたが、その加工内容が未定でもない限りは、本来は加工のしやすさ等から考えて丸太柱の小穴加工は現場に建てる前にしておくのが普通です。そこで、溝を突く機械といえばミゾキリですが、そのままでは丸太は丸いのでベースが安定しない為、バタ角等を丸太の隣に置いて、その上に合板等を打ち付けてミゾキリはその上を走らせます。


かつ角材と違い元口と末口で径が異なるので、建付が関わる収まりの加工の場合は元口から末口にかけて小穴は浅くなっていかなければなりません。そのため、丸太によっては6尺間の小穴を突く場合でも元口から末口にかけての深さの差が1寸以上になることもあります。しかし、現行の小型ミゾキリ、仕上ミゾキリ、胴縁ミゾキリ共に最大切込み深さ自体が1寸程度なので、末口側の小穴の深さはゼロになってしまいます。そこで考えたのが

この電気ミゾキリです。写真の機械は冗談抜きで半世紀以上経過しているヴィンテージ物です。しかしこれも、最大切削深さは1寸程度で現行の物と変わりません。ではそんな古い機械がどのように現行のミゾキリに勝るかというと、見ての通り、現在のミゾキリよりデカいのです。これには理由があり、電気ミゾキリには180mmの7インチのマルノコの刃が取付可能になっています。(現代の7インチの刃といえば190mmですが、以前は180mmでした。)以前はマルノコにはアルミベースの物などなく、ペラペラの鉄板ベースに、後部は華奢なリベット1個で留めてあるだけで、平行定規もペラペラの1本差しだったので精度が出ませんでした。そのため、定規もきちんと作られている電気ミゾキリを使って材料の挽き割りをしていました。このデカさを利用して考えるのは当然、デカい刃を付けて加工することですが、いくらデカいとはいっても、200mmを超える溝突盤の刃は付けられず、ボツ案になりかけましたが、イイ物を思いつきました。それが

このカッター刃です。現在のミゾキリ刃は120mmがメインですがこの刃は140mmあります。知る人ぞ知るこの刃、実は松井鉄工所製のラジアルカッターという機械用で格天井の組子を作る時に、格縁の相い欠きに使用するための刃です。

現在でも、ラジアル21という名前でこの機械は販売されています。ではこの専用刃が何故電気ミゾキリにフィットするかというと、ラジアルカッター自体が電気ミゾキリを改造して作られたものだからです。しかし、ラジアルカッターにベースは存在しません。そのため

電気ミゾキリに組子用カッターを付けるとこの赤い部分が当たってしまうので、グラインダーで拡張します。ここだけいじれば組子用カッターを付けても他は干渉しません。

余談ですが、この機械、半世紀以上前に作られた物なのにもかかわらず、現在のミゾキリにも無い先進的?な機能を搭載しています。それが

このソーカバーの裏の上部分にあるオレンジ色のボタンです。これは復帰ボタンといって、モーターに過負荷がかかった時に自動停止して、このボタンを押すと再度使用出来るという機能です。この機能、現代にも負荷の大きい切削機械にはあっても良いのではないでしょうか。